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[ 新書 ]
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日の丸・君が代の戦後史 (岩波新書)
・田中 伸尚
【岩波書店】
発売日: 2000-01
参考価格: 819 円(税込み)
販売価格: 819 円(税込)
中古価格: 1円〜
( 通常24時間以内に発送 )
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・田中 伸尚
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カスタマー平均評価: 3.5
コンパクトな通史 知っているようで知らない日の丸・君が代の戦後史をコンパクトに書いている。日の丸・君が代の下に敗戦を味わった日本人は、1950年くらいまではこの旗と歌に冷淡な姿勢をとりつづけていたという。そこから1999年に国旗国歌法が施行されるまで、政府が日の丸・君が代の定着をどのように図っていったかがわかりやすく描かれる。99年2月に起きた広島の県立高校長の自殺が、法制化への大きなバネとして使われたこともよくわかる。
本の後半部分は教育現場をめぐる動きにほぼ絞られているのだが、もう少し分析に広がりがあれば、日の丸・君が代の変容をさらに重層的に描くことができたかもしれない。たとえば、筆者が少しだけ書いているスポーツイベントやテレビの役割だ。東京五輪が日の丸・君が代のイメージを「リニューアル」する機会だったという議論に、筆者は触れている。だとしたら、そこからさらに巨大化し、テレビを味方につけた国際的なスポーツイベントは、この旗と歌のイメージをいっそう変える力をもっていただろう。2002年サッカー・ワールドカップでの日の丸・君が代は、東京五輪のときとは明らかに別ものだった。
政府が意図した変容だけではとらえきれない部分もあるはずだ。しかし、そのあたりのことは、また別の本のテーマなのかもしれない。
思想本としては合格であるが・・・・ この本をもってして日の丸君が代の是非について考えようとしている方 は購入を差し控えたほうが良い。この本を買うべきなのは、過去日の丸 君が代にただひたすら反対し、「弾圧」を受けた人々が回顧する目的に おいてのみである。 この本はまず、日の丸君が代反対ありきで、理性 的、建設的な内容とはとてもいえない。内容が「戦後いかに日の丸君が代が不合理に国旗国家の地位を占めてきたのか」を主眼とし、なぜ反対 なのかというのがおざなりとなっており、反対派で抵抗している人間を 指して「希望」という表現を使うなど、まさに反対派の自己満足のため の本といえよう。
思想本としてはこれでいいのであろうが・・・ まずこの本を読んで日の丸君が代の是非について考えよう、ということ は期待してはいけない。この本は日の丸君が代に反対という前提の下か かれており、タイトルだけを見て「国旗国家法が制定される背景を書い てあるのかな」と思い、購入した私と同じようにバカを見ることにな る。作者の自己満足のために書かれた本といってよい。何かを提言しよ うという意思が見られないからだ。強いてあげるならば「反対派はこの ように反対してきたんですよ。賛成派はこんなひどいことをしたんで す。」ということぐらいか。 日の丸君が代にただ反対する人にとってはこの本はバイブルとなろう が、賛成反対に関わらず真剣に考えたい人にとっては無用の長物であろう。
シンボルの裏の政治 戦争責任問題に詳しい1941年生まれの元朝日新聞社記者の手になる本。日の丸・君が代に関する戦後日本の流れを具体的に記述する。戦後日本政府の政策とそれへの抵抗運動が記述の中心を占め、占領期沖縄を除けば、日の丸・君が代にアイデンティティを感じる人々の感情はあまり触れられていない。その点では日の丸・君が代への批判を前提として書かれた本であると言えるわけだが、その分内心の自由の問題が前面に出ているといえる。他国の反応についても記述は少ない。
そもそも1999年以前、日の丸・君が代に法的な裏づけはなく、現在でもそれらの尊重義務はない(法制化の際、却下された)。それにもかかわらず、国民全員に押し付けるのが無理と見た政府は、教員と生徒という「弱い輪」に付け込み、そこに法ではなく通達の形で(指導要領の法的拘束力もどこまであるか疑問)、事実上の尊重義務を課した。したがって、本書でも大半の記述は教育現場の問題である。現在、この結果として学校での国旗掲揚・国歌斉唱はほぼ100%に近いが、果たしてそれで教育問題は解決したのだろうか。オリンピックのような国際的な場での礼儀の問題にしても、会場に向かうバスの中ででも注意した方がよほど意味があり、むしろ具体的にフーリガン対策の方が優先されるべきだと考える。
戦後日本において、日の丸・君が代が現実に国家統制の道具として利用されてしまった記録であり、法律によって人間の内心がどれだけ縛れるかについて考えさせられる本である。
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雪はよごれていた―昭和史の謎 二・二六事件最後の秘録
・澤地 久枝
【日本放送出版協会】
発売日: 1988-02
参考価格: 1,260 円(税込み)
販売価格: 品切れ中
中古価格: 1円〜
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・澤地 久枝
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カスタマー平均評価: 4
2.26事件の検察官が残した貴重な資料 「血気にはやる陸軍青年将校が暴走した」という説明に終わることの多い2.26事件を,事件の主席検察官が秘蔵していた膨大な文書をもとに再検討した本.将軍クラスの皇道派将校が,クーデター後に陸軍大臣を担いで戒厳令を布告させ,彼らの行動を肯定する大臣告示を出させ,さらには反乱軍を戒厳令司令官の指揮下に入れるという「離れ技」をやってのけた過程が資料をもとに正確に描かれている.続いて,反対派(統制派)の巻き返しが起こり,天皇も事件に憤り,クーデーターは頓挫.ここから軍首脳が反乱そのものに関与した事実を隠し始める.軍首脳のごまかし,忘れたふり,言い逃れがどのように行われてたかが,鮮明に浮かび上がっている.この貴重な資料により,検察の追求が激しく,真実を突き止める一歩手前まで来ていたことが分かる.
著者の丹念な調査と本の内容については星5つ.ただ,せっかくの内容なのだからもう少し啓蒙的になってもよかったのでは.旧カナ使いで書かれた資料が延々紹介してある箇所などは辟易させられた.また,陸軍に皇道派と統制派が存在していたことや,荒木貞夫,真崎甚三郎がどういう人物なのか,山下少将は皇道派に属していた等々,当時の軍派閥や中心人物の紹介など,基本的背景についての説明が別途あってもよかったのでは.残念ながら,2.26事件によほど興味があるか,ある程度の背景的知識を持っていないと本書は読み進められないと思う.
謀られた青年将校の悲劇 ニ・ニ六事件の謎とされた「陸軍大臣の告示」を巡る新資料の発掘により、新たに描かれた事件の内幕を細かく描いている。青年将校の暴発のみによっては決して説明しきれようもない新事実が発見されている。詳しいところは(本の内容に抵触するので)書くことができないが、この本がニ・ニ六のイメージを一新させていることは間違いない。
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[ 単行本 ]
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帝国の昭和 (日本の歴史)
・有馬 学
【講談社】
発売日: 2002-10
参考価格: 2,310 円(税込み)
販売価格: 2,310 円(税込)
中古価格: 1,243円〜
( 通常24時間以内に発送 )
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・有馬 学
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カスタマー平均評価: 4.5
開戦に至る経緯は説得力あり 日米開戦に至る過程は「各政治勢力がその時その時の最悪の選択を避けようとして行った決定の積み重ね」であり、「誰が主導者であったかよりも、そのような曖昧な決定の連鎖が、どのようにして開戦という決定的な選択に結びつくのかを明らかにすること」が大切であるとする主張は説得力がある。ただ、著者自身述べているように、前半部分は「何か特定の結末に向かって進む道筋という叙述の仕方は採用していない」ので、時代背景等についてある程度予備知識のある読者でないと難解と感じるかも。
キーワードは「革新の光明」「モダニズム」 本書とほぼ同時代を扱った北岡伸一『政党から軍部へ』(中央公論新社)が、政治・外交・軍事を叙述の軸にすえた良い意味でオーソドックスな構成だったのに対し、こちらはより凝っている。いろいろな意味で戦前の昭和史を記述するのは難しい。そもそもなぜ、当時の日本はあれほど対外戦争に明け暮れたのか?それをまたどうして、当時の日本人は右も左も関係なく翼賛していくことになったのか? この疑問に応答するために、「軍刀をガチャつかせた横暴な軍部に無知無力な大衆は引きずられたのだ」といった、現代にあってなお多くの人が漠然と抱くイメージに著者はほとんど頼ろうとしない。 著者の提示する回答のひとつは、ある意味拍子抜けするものだ。当時は「誰も戦争が愚かだとも悪だとも思っていなかったからである」p8。 さらに重要なのは、当時の対外戦争が要求する総動員体制(合理化・組織化)の波が、マルクス主義を潜り抜けた日本人に「後進的・封建的な」日本社会を一気に高みへと引き上げる逆転ホームランだと観念されることとなった、という指摘だろう。 資本主義の没落・革新の光明・近代の超克といった諸々の概念がリアリティを持って知識人や官僚に訴えかけていた、そんな時代だった。 マルクス主義とナショナリズムとの親和性、戦時体制とモダニズム・・現代人から見れば不合理で不可解でしかない昭和戦前期という「外国」への「方法論的帰化」を試みてみたい、と言う著者の提示する視角は既成観念から自由であり、スリリングでさえある。やけに醒めた文体も印象的だ。前述の北岡本と一緒に読んでおきたい一冊。
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[ 文庫 ]
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昭和天皇(下) (講談社学術文庫)
・ハーバート・ビックス ・吉田 裕
【講談社】
発売日: 2005-08-11
参考価格: 1,470 円(税込み)
販売価格: 1,470 円(税込)
中古価格: 850円〜
( 通常24時間以内に発送 )
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・ハーバート・ビックス ・吉田 裕
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カスタマー平均評価: 3
日本史ポストモダンの代表格 ダワーや著者が歴史を政治的に利用していることはピーターウエッツラーが批判している。戦争責任なるものがあるとすれば負けた責任だろう。それは右派も認識しているではないか?、、、ウエッツラーは著者は70年代から日本の国史セミナーでマルクス主義系の日本人に影響されたのであろう指摘する。日本が育てたマルクスボーイが国外なら通用するだろうと出てきたわけだ、悪質である。
一級の資料です。 これまであいまいに言われていた資料がはっきりと書かれています。 例えば、昭和天皇の終戦史<吉田裕>で天皇に戦争が勝てるといった 軍人の記載が出ていますが、この本では明らかに水野修身軍令部長 である事が分かります。 日本人の無責任さかもしれませんが、資料の多くが伏字で書かれたりしています。右翼の報復が今でも恐ろしいのでしょうか? その点アメリカ人のピックスははっきり書いています。ジャーナリストの心意気が違うのでしょうね。悲しいなあ。 この本を読めば、昭和天皇は、戦争に賛成していたことがよく分か リマス。それが国内ではあたかも戦争反対であるというデマに摩り替えられています。逆にこの本で実相を知ると、昭和天皇の苦労にも 理解ができ、個人的に素晴らしい人間でも天皇制という制度で個人が不幸になる過程が理解できました。でも今までと違う点は、こうして無力になった天皇が、再び神秘性を回復する過程が書かれている点です。 だからこれは左翼の歴史観でも天皇を中傷する本ではありません。 残念な事に、明治天皇も昭和天皇も最高の著作がアメリカ人によって書かれたことが少し残念です。本当のことを、日本人は怖くてかけない 臆病者なのでしょうか?付け加えると、アメリカの日本民間人 への、空襲は、実は日本が、重慶爆撃で行なった国際法違反を 逆手に、日本人に行なった事がよく分かりました。戦争って、ほんと悲惨でわ。
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[ 文庫 ]
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昭和天皇語録 (講談社学術文庫)
【講談社】
発売日: 2004-01
参考価格: 1,208 円(税込み)
販売価格: 1,208 円(税込)
中古価格: 1,000円〜
( 通常24時間以内に発送 )
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カスタマー平均評価: 5
喜びも悲しみも国民とともに 近年でも、特定の政治的立場が天皇陛下のお立場やお言葉を恣意的に引用して、自らの都合のよいように利用とする傾向が見受けられるのはきわめて由々しいことで、遺憾である。民主主義、立憲制の下では、慎重でなければならない。
本書では、昭和天皇のお言葉について、その即位から昭和の終焉まで、丹念に余すところなく収録している。常に国民や国家、ひいては世界の安定と平和にいたるまで気遣われているのがよくわかる。解説もついているので、その背景も理解しやすい。
むろん、生の声であるので、中にはユーモアあふれるものや、政治的に悪意のもとに利用されるのではないかと心配になるものあるが、それらも含めているのが学術的に誠意ある態度であり、また一人の人間としての昭和天皇の魅力になるのであろう。
特定の政治的立場からではなく、実証的な記録として、また昭和天皇の人柄のしのぶための一冊である。
20世紀の名君「昭和天皇」の生の声 進歩的文化人や天皇制批判の方がお読みになれば不愉快極まりない本かもしれないでしょう。あるいは、必ずしも饒舌ではなかった陛下の言葉尻を捉えて、ある一定のネガティブな結論を導こうとする材料になるのかもしれない。
しかし、ほかでも書いたが、昭和史を丹念に見ていった場合に、昭和天皇は、皇太子時代のイギリス留学で「君臨すれども統治せず」というイギリス王朝の伝統を学び、大日本帝国憲法をゆがめて捕らえれば全権の独裁者たりえたのに、自制的であられた。2・26事件でこの禁を破って自ら反乱軍制圧を指示して以来、それが、結論として正しくても、立憲君主制では「違反」と考え、以後、最も反対していたアメリカとの開戦にも、明治天皇の御歌を二回詠まれて、さりげなく意思表示するにとどめ、自己の意に反した開戦の詔勅を発した。その後、終戦のご聖断で再度禁を犯したが、これは結論において極めて正しかった。
このように天皇としての発言には、戦前は特に真意とはなれたところがあった。
戦後の記者会見や、何か大きな事件があったときのご感想を述べる天皇のお言葉のほうが、「人間天皇」の真意として捉えられるべきものと思う。
若干編集が不均衡であるが、それは、素材が限定されていたから仕方ないであろう。
昭和天皇誕生日に
戦争責任ありの証明に有効 やっぱり彼は人間の心など持たない恐ろしい人物だったことを実感した。 <戦争責任を言葉の綾>と言いきったのには呆然とする意外にはない。
日本の象徴たる天皇 今なお、昭和天皇の戦争責任を云々し、それに伴う形で天 皇不要論或いは天皇制廃止を声高に主張する人たちが一部で 見受けられる。言論の自由を盾にした破廉恥な言動と言わざ るを得ず、同じ日本人として大変に不愉快で恥ずかしい思い をなさっている人もさぞ多いことだろう。 そのような反天皇論者に真っ先に読んで欲しいのが、この 書である。 皇室が余りにも身近になり過ぎたせいか、その本来の高貴 さが忘却せられ、皇室を敬う心など今や廃れてしまったにも 等しい。しかし、現行憲法上、天皇は日本の象徴であって日 本国民統合の象徴とされているのにはわけがある。それは、 天皇や皇室が日本人が誇るに足る存在であるという、考えて みれば至極当然のことである。 本書からは、昭和天皇のお人柄がひしひしと伝わって来て、 思わず身震いしてしまうほどである。天皇不要論など、殆ど 検討するにも値しないような馬鹿げた茶番だということを能 く思い出させてくれる。
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昭和天皇の悲劇―日本人は何を失ったか
・小室 直樹
【光文社】
発売日: 1989-02
参考価格: 735 円(税込み)
販売価格: 品切れ中
中古価格: 480円〜
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・小室 直樹
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カスタマー平均評価: 5
戦争を終結できたのは誰のお陰? 大東亜戦争が終結できたのも天皇制のお陰と言ってもいい。
何故ならああでもしない限り誰が戦争を止めただろう。国民がケリを着けられなくなった戦争を天皇が「止めなさい。」と言ったから皆納得して武器を置いた(口実が出来た)。
なのに戦後「天皇は何故戦争回避しなかった。」などと言う輩が出てきた…何と恩知らずで,見当違いな事を言う人達だろう。
日本は独裁国家ではない。議会制民主主義の国である。
もし議会を無視して天皇の意向が国政に反映されたら,それこそ「議会制民主主義の死」である。マァ手前勝手な言い分ですわな。都合が良い時は「民主主義だ」と言い,都合悪くなると「我輩は”独裁国家だ」と衣替えするようなモノで「アンタ一体どっち?」となる。
日本は明治以降「議会制民主主義」の国である(独裁制ではない!!)。その議会が戦争を進め(国民の支持のもと)、それを議会は止めなかった。選挙によって選ばれた代議士達がいかなる働きをしたか…繰り返すが日本は議会制民主主義の国である。決して独裁国家ではない。議会の意思は国民の意思。コレを無視して天皇の意思が優先されれば日本は議会制民主主義ではなくなり独裁国家という事になる。「それでいいのか?」と。「君臨すれども統治せず」の意味を日本人はよく分かってない。君臨すれども統治しない…というのはコレ「君臨だけするけど、私の言う事を聞く必要ないですよ」という意味。コレはツライ事である。君臨してはいるが、議会が認めないものは国政に反映されない。何故か,日本は議会制民主主義の国だからである。それでもう十分だろう。説明は十分。何故,天皇に戦争責任が無いか。議会が決める事である。天皇が決める事ではない。だから天皇というのはそういう立場なのである(議会制民主主義を守るために天皇は口を挟まなかった…国民を信じたわけである「もう大人なんだからそのくらい任せていいだろう」と。全く子を見守る親の立場だね。)。自分達(国民とその議会)が始めた戦争で,そのケリを着けられなくなったのを,そのままでは国が亡くなるから天皇が自然権だったかな,言う必要が無いくらい当然の権利,正当防衛とでも言えばいいか,議会が機能しなくなったから奥の手「天皇大権」を行使した。ま,天皇制が水際で亡国の危機を救った典型である。戦争にケリを着けてくれたのはアメリカとも言えるし,天皇とも言える(筋としては日本国民が議会で決すべき事。誰かが止めないと止まらないなんて情けない…自分で止まれない)。真珠湾で勝った後,ミッドウェー敗戦後,はたまた硫黄島奮戦後,戦争を止める切っ掛けに成り得るものは幾つか有ったのに,それらを尽く活かさなかった。結果「原爆」まで行って,天皇の玉音放送である。「そうなる前に」国会が戦争停止を決めれば良かっただけの話だ。議会が軍に「止めろ。」と言えば済んだ話。もし天皇が「止めろ。」と言わなかったら本当に一億総玉砕だったろう。ゾッとする。
また戦争の根本原因についての考察も鋭く「戦争とは、結局、経済が上手く行かなくなるから起きる。」と。つまり、戦争を防ぐ一番の方法は経済を上手くやっていく事である。今の日本はどうであろう。危ないでしょ。経済が上手く行ってるうちは文句は出てこないが、そうでないとやはり戦争の危険性が高くなる。日米戦争だって、日中戦争だって、突き詰めていくと経済の困窮が原因にある。
また上の補足として、二・二六事件が挙げられており、「反乱軍がその警備をする正規軍に組み入れられるというとても考えられない現象が…」というようなことがあり(この説明が非常に面白く「これは放火魔に火の用心をさせるようなもの…」とあり、これは大爆笑! 今の日本でもこれと同じ事が起きていると思うが)、「これを軍の首脳の殆どは名案だと思ったらしい…」と。この意識は現代日本人にも通じる。つまり「身内に甘い」のと「世間の評価」だ。当時も一般国民は「カネ持ちが悪いんだ。」という意識があったはず。その金持ちをやっつけるのが軍人さんだという意識もあったはず。だから反乱を起こした将校達も、自分達は国民の支持が得られるものと思い込んでああいう決起を起こしたのであろう事は容易に察しがつく。「自分達の行動は皆に支持される。」と信じての行動だろう。それが例え「法を犯したとしても」だ。日本人の法意識の源をここに見ることが出来ると著者は言う。法の上に更なる価値観がある。道徳というか、儒教意識というか、日本人にとって法とは至上のルールではないのだ。ルールを越える何かが日本人の行動規範の源になっている。
以上のような事がこの本では指摘されている。その他諸々…
今の日本人と当時の日本人は似ていると思った。当たり前と言えば当たり前だが、しかしこれでは同じ過ちをまた繰り返し兼ねない…過去に学ばないとは如何なものか。「経済が上手く行かなくなるから軍事力行使に走る。」と。その危険は高くなる。ならば本気で戦争したくなければ経済を是が非でも好転させねばならないはず。形振り構わず・・・に。
最後に、この本で一番印象に残ったのはやはり上に書いた二・二六事件の軍首脳部たちのヘンな意識「身内に甘い」と、これに付け加えて「世間の目」「世間の評価」を非常に気にする、というところだ。それは「世間を味方に付ければ、あとはどうでもよい。法などどうでもよい。」とする考えが日本人にはあるようだ。それは今の日本人にも見られる…これはある意味とても興味深いことだ。
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[ 単行本 ]
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「聖断」虚構と昭和天皇
・纐纈 厚
【新日本出版社】
発売日: 2006-12
参考価格: 2,415 円(税込み)
販売価格: 2,415 円(税込)
( 通常24時間以内に発送 )
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・纐纈 厚
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カスタマー平均評価: 5
しっかりとした検証作業 本のサイズそのものは手ごろ。その枠内で、1945年のポツダム宣言受諾にいたる政府・宮中・軍部などの意思決定プロセスを、各種の文献を使ってていねいに検証している。戦争責任問題や歴史認識問題などを考える人は、必読の文献だと思う。
読んでおきましょう さて、戦後61年を迎え、我々はこの後どうなるのか。敗戦、「ポツダム宣言」受諾までの課程で昭和天皇がどういう経緯で聖断という行為に走り、それが虚構だったのかと言うことを年密な資料を基に書かれています。敢えて右傾化するこの時代にこういう本を出す勇気には感服します。昭和天皇が主戦論だったこと等はあまり知られていません。この本ではこの事を解き明かしてくれています。数多くこれらに関する本は出ていますが、昔も今も変わらないのがこの国の外交が如何に場当たり出来ていい加減な物で大局を見ていないかも伺えます。読んでおいて損は無いでしょう。ライトサイドの人にはお薦めしません。
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[ 単行本 ]
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あるエリート官僚の昭和秘史―『武部六蔵日記』を読む
・古川 隆久
【芙蓉書房出版】
発売日: 2006-03
参考価格: 1,890 円(税込み)
販売価格: 1,890 円(税込)
中古価格: 259円〜
( 通常24時間以内に発送 )
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・古川 隆久
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カスタマー平均評価: 0
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[ 文庫 ]
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帝都東京・隠された地下網の秘密〈2〉地下の誕生から「1‐8計画」まで (新潮文庫)
・秋庭 俊
【新潮社】
発売日: 2006-05
参考価格: 500 円(税込み)
販売価格: 500 円(税込)
中古価格: 100円〜
( 通常24時間以内に発送 )
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・秋庭 俊
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カスタマー平均評価: 1.5
もはやなんとも… 一冊目は著者の妄想が笑えるトンデモ本として楽しんだ。
しかし?(2)が出るとなると、出版社の良識を疑う。平積み山積みしている書店の良識も疑う。
売れれば捏造妄想なんでもアリですか?良書を提供する書店の社会的意義は?
まあAmazonで売っているのはこんな「レビューが公開される」という条件でスレスレOK
ネタとして楽しめる大人だけが買いましょう。地図と付き合わせると面白いです。
この著者、結局こういう人なんですね(笑) 情報が未整理の上、推測に推測を重ねて憶測でこね固めた内容を、大いに乱れた文章で書きなぐった第一作より、かなりマトモになっている。今度は編集の人がきちんと手を入れたのだろうか。
しかし、それでも基本的なスタンスは変わっていない。文章が読みやすくなったおかげで楽しめる部分もあったが、資料誤読の激しさは相変わらずだ。
資料である古い地図の註「実際使用する際は?」について、「実際使用とは、いったい何を実際使用するのか。まさか存在しなかったようなものが…」っておいおい、頭大丈夫か(笑)。どう読んでも地図を「実際使用する」としか読めんだろが------てな所が今回も結構あり、せっかく楽しめる所があっても一気にシラけてしまう。なんというか陰謀バイアスかかりすぎ。あと国の人に対する妄想も激しすぎ。この人、きっと政府や省庁の人に会ったことないんだろな(笑)
少しだけリアリティのあるトンデモ本としてなら星三つ。マジメに読んでいると「自称ジャーナリスト」のいい加減さにハラが立ってきます。
要は別の楽しみ方をすればいいのではないかと この本がよく読まれている理由は、おそらく、自称ジャーナリストの「嘘」を自らの知識で暴いていく醍醐味なのではないかと。その意味でこの本は、図らずも日本人の民度の向上に貢献している良書かも。
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[ 文庫 ]
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日本の歴史〈26〉よみがえる日本 (中公文庫)
・蝋山 政道
【中央公論新社】
発売日: 2006-10
参考価格: 1,300 円(税込み)
販売価格: 1,300 円(税込)
中古価格: 1,290円〜
( 通常24時間以内に発送 )
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・蝋山 政道
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カスタマー平均評価: 0
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