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[ 単行本 ]
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天皇のロザリオ 上巻 日本キリスト教国化の策謀
・鬼塚 英昭
【成甲書房】
発売日: 2006-07-08
参考価格: 1,995 円(税込み)
販売価格: 1,995 円(税込)
( 通常24時間以内に発送 )
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・鬼塚 英昭
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カスタマー平均評価: 4
後世の社会史研究者が本書を元に『チーズとうじ虫』のような本を書けるかも知れない 思い込みの激しい、強引な推論が重なるので途中何度も投げ出しそうになったが、結局2週間ほどかけて上下巻を読了した。内容は、副題の通り。
敗戦直後、国家神道の解体や天皇の戦争責任回避、マッカーサーの思い入れなどが交錯する中で、天皇のキリスト教改宗が議論の俎上に上ったことは事実だろう。当時の状況では、西洋文化に親和性のある人材が政治の中枢に引き入れられやすく、クリスチャン比率も高まっただろうから、日本をキリスト教国に…という空気が相当の範囲で醸成されていたとしても不思議ではない。
しかし本書は相対的に堅実な方向での検証に留まることなく、GHQ占領下の日本で天皇の劇的なカトリック改宗を演出すべく、1949年6月の「ザヴィエル渡来四百年祭」開催と抱き合わせた陰謀が具体的にあった、と踏み込む。それが冒頭で描かれる「別府事件」であり、本書の全体が、この陰謀が現実にあったという前提の下で初めて許容されるような語調の激しさに彩られている。ところが、本書の支柱となるはずのこの「事件」に、直接的な証拠は何一つ示されない。
要するにここには、状況証拠により特定の「出来事」を「事件」化し、この「事件」を前提に状況証拠をさらに深読みするという自己増幅的な循環がある。孤独な思索者が、一種のハウリング現象に囚われてしまったと言うべきだろう。
ただそれでも、私は本書に幾許かの真実はあると思うし、市井に生きつつともかくも自力でここまで資料を集め、考え抜いた著者のある種の強靭さを、無碍に貶めたくはない。
奈良新聞は「本年読書界で最も刺激的な書」と 奈良新聞の書評で「本年読書界で最も刺激的な書」とあったので読んでみたがなるほど迫力満点、しかも日本社会の本質を深く考えさせられる本だった。知られざる昭和天皇の一面だけでなく、日本政府と宮中の高官が一体となって仕組んだ日本キリスト教国化の全貌が、まるでミステリー小説にように次第に明らかになっていく。スリリングでまさに刺激的、良い本に出会えたと思う。タブーに果敢に挑んだ勇気ある著者に拍手。
トンデモ本 冒頭および前半のキリスト教の謀略についてはうなずけますし、ありえることだと思います。
脇の「決して僕だけの誤りでない事を確かめ得たのである。」という文からも。しかし中半からは、全く同意できない。
1.明治天皇(孝明ではない)暗殺すり替え説を普通に採用している。
2.広田首相に条件を出した昭和天皇を絶対君主だとののしる割に、開戦の内閣決定を拒否せよという。(ちなみに終戦の決定は、内閣が二つに割れたからである。)
3.戦前に「天皇教」があったとする説。4.キリシタンの日本人万人級連行説(日本人奴隷自体はあった。)
よく調べている姿勢には好感がもてる。しかしおかしい著述いっぱい、虚実無い混ぜでもある。
著者は文中共産主義者を否定しているが、自分の頭で考えているつもりだろうが、言っている事が全くのghq注入史観である。(日本だけが悪いとする。)
「少年H」と同じ世代(終戦時小学生)なのもうなずける。
僕たちはいったい真実なるものを知っているのかしら? なんという偶然なんでしょうかね。ちょうどこの本の出版が昭和天皇のスクープとタイミングあってしまいました。この本の論旨からいけば、このスクープが扱っている昭和天皇の発言の論理もそしてその政治的な意味も十分理解可能です。この本には一切注なるものはありません。しかしながら大量の翻訳書を読みこなしたことは確かなようです。したがってどの程度、歴史学上考証が可能なのかは、素人には判明不可能です。基本的には状況証拠を積み重ねです。その結果、著者の直感に起因する推敲が展開されていきます。その推論の積み重ねは、驚くべき結論に読者を導きます。果たして導かれた結論は真実なのでしょうか?この本を手に取った読者が自分自身で判断するしかないでしょう。1945年から1949年にかけて繰り広げられた”静かな闘争”の論理と意図は確かに明確に説明されています。
などてすめらぎは 「機銃掃射に追われていた祖母は、敗戦を境に朝日を拝まなくなった」この本読了後、私もこの老婦人と同じ心境に差し掛かっております。
世の中には数々の「反天皇本」が存在します。私は若い頃よりこの種の「不逞の輩」本に論争を挑んでいました。若輩者の私ですら「論破可能」と断言できる本が多かったのですが、本書『天皇のロザリオ』については違います。
本書内容の1割にはクエスチョン・マークを付ける事が出来ましたが、残り9割は「反論不能」でありました。星5つです。
この本の著者、鬼塚英昭氏は言論で飯を食っている方ではありません。「であるが故に」凄い本なのです。言論村に巣くう知識人であれば、本書『天皇のロザリオ』の様な本を書けば言論人生命に終止符をうつ覚悟が必要となるでありましょう。言論村の住民票を維持したいのであれば「ナニ?大分在住竹細工職人が書いた天皇本?」と馬鹿にする態度を取るのが賢明でありましょう。
数多くは書きません。「これは『日本版ダヴィンチコード』だ」との推薦文が載っておりますが、ダヴィンチコード以上の衝撃を保証します。特に(私の様な)民族派と呼ばれる方。知的誠実さを持たれた上で読んでみてはいかがでしょう。【第四章「神」のつくり給いし財宝の行方】を読まれた時、貴殿はどう感じられるでありましょう。「出来る事ならウソであって欲しい。私には無理だが誰か反論してくれ!」というのが現在の私の心境であります。
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[ 単行本 ]
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天皇のロザリオ 下巻 皇室に封印された聖書
・鬼塚 英昭
【成甲書房】
発売日: 2006-07-08
参考価格: 1,995 円(税込み)
販売価格: 1,995 円(税込)
( 通常24時間以内に発送 )
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・鬼塚 英昭
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カスタマー平均評価: 5
私たちが見たくない一面の真実 断片的な日本の近代についてのいくつかのイメージや仮説があるわけですけど、私たちはそれ以上のsynthetisの作業には踏み込むことはありません。その危険な領域にまで踏み込んだのこの作品です。そのモティーフは、キリスト教の日本への侵入とそれへの抵抗とcollaborationです。歴史書ではなくドキュメンタリーというものでもありません。たくさんの書物をこの角度から読み直して、そこに著者が直感から得たデザインと推理を補強する状況証拠を探した作品です。でも状況証拠の積み重ねは、選択的でわかりにくく、強引な部分もあります。しかし、この孤独な作業によって浮かび上がらされた近代特に戦後日本の姿は、あまりにもグロテスクで目を背けたくなるほどです。確かに日本は大量の改宗が起きなかったという意味ではキリスト教の侵攻を防ぐことに成功しました。しかし一神教の相手はもっと上手だったというわけです。特に皇室の周辺に徘徊することになった多数のキリスト教コネクションの人々の姿と彼らの果たした役割はどう形容したらいいのでしょうか。godでもなく神でもなく、多神教のカミに日本の根源を求めるというのは、著者の最後のかすかなよりどころです。
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[ 単行本 ]
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図説・2・26事件 (ふくろうの本)
・平塚 柾緒
【河出書房新社】
発売日: 2003-01
参考価格: 1,680 円(税込み)
販売価格: 1,680 円(税込)
( 通常24時間以内に発送 )
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・平塚 柾緒
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カスタマー平均評価: 5
丁寧な図解 二・二六事件は日本近代史を揺るがす大事件でした。
にも関わらず、これのみに視点を当てた本はあまり多いとはいえません。
そんな中でも、この本は写真や事件の一連の動きなどが詳細に記されています。
この事件を知る上で非常に参考になると思います。
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[ 文庫 ]
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日本の歴史〈24〉ファシズムへの道 (中公文庫)
・大内 力
【中央公論新社】
発売日: 2006-08
参考価格: 1,300 円(税込み)
販売価格: 1,300 円(税込)
中古価格: 550円〜
( 通常2〜3日以内に発送 )
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・大内 力
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カスタマー平均評価: 0
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[ 文庫 ]
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昭和史発掘 (7) [新装版] (文春文庫)
・松本 清張
【文藝春秋】
発売日: 2005-09-02
参考価格: 870 円(税込み)
販売価格: 870 円(税込)
中古価格: 518円〜
( 通常24時間以内に発送 )
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・松本 清張
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カスタマー平均評価: 5
悲惨。 226の事件現場を有力者別に書いています。 高橋是清は15発は、弾丸を打ち込まれている。 鈴木貫太郎のように3発打たれても、妻のの止めを刺すな で、命拾いした人。 弟が身代わりで助かった岡田啓介首相。涙が出ました。 そして、命がけの40人の警察は、右翼軍人にピストルの弾が切れると 素手で立ち向かい殉職。 渡辺は、娘を守るために右翼と打ち合い、惨殺。娘はゆうめうなシスター渡辺さんです。 家族のために多勢に無勢でも、戦った立派な軍人の最後です。 これを読めば右翼の正体、恐ろしさの分かる名著です。 一方では布団をかぶって逃げていた警察官もいたんです。 その人間模様も、楽しかったですね。
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[ 単行本 ]
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昭和史からの警告―戦争への道を阻め
・船井 幸雄 ・副島 隆彦
【ビジネス社】
発売日: 2006-06
参考価格: 1,575 円(税込み)
販売価格: 1,575 円(税込)
中古価格: 598円〜
( 通常24時間以内に発送 )
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・船井 幸雄 ・副島 隆彦
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カスタマー平均評価: 3.5
タオイズムの実践 本書はこれに尽きると思います。しかし、読んでいくうちにわたしとしては、副島観が目減りしたかなと思います。国士無双みたいな男があろうことか船井と出会うまでの煩悶と苦悩を縷々述べており、些か気疲れてしまった。この対談では未来予測が述べられているのですが、今の状況からでは全く見当違いだということもあります。それは、安倍首相(平成19年現在に至るまで)の背景を副島自身の最新の著作で浚っているのですが、やはり、全ては結果論であり後付けの評価なのだと感じました。言い換えれば、好い加減なんですね。南京事件も蒋介石の評価も侵略の定義も、海軍三悪も瑣末だと思わざるを得ません。起こった事象をその都度のサイクルがあると信じているという、それこそ陰陽道の法則に照らし合わせているという事だけであって、牽強附会だと思いました。師と仰ぐ岡田英弘は歴史に法則はないと言っておりますが、これでは摘み喰いなのではないかと思います。確かに、戦争は起こさない、起こしてしまった戦前の指導者は愚かしいと言えますが、それこそ、本当の権力者の思惑や意向なのであり、前後でブレているなと感じました。どうした?副島あっ!
少し引き気味ででも読む価値はあり 過激な内容である。あの9/11がアメリカの自作自演だと言うのだ。世界をブッシュではなくロックフェラーとロスチャイルドが操っていると言うのだ。あの戦争を推し進めたのは陸軍ではなく海軍だというのだ。しかもアメリカに内通した海軍幹部が・・・・・。パールハーバーまでもがアメリカの自作自演。正直これらの論述にぶったまげてしまった。この本を読んだだけでは、副島氏がこれらの結論に至った根拠がわからないが、これらの「謀略」が本当にそんなに一握りの人間が考えたように事が運び、「歴史」が形成されてしまうのだろうか?との疑問は当然のように沸いて来る。しかし「面白い」。そして、そう考えると何となく説明がつき易い、という気もする。評価は難しいが、一歩下がってでも読んでみる価値はあると思う。少なくとも筆者の信条や価値観には共感できると感じる。
巻末には、対談のお相手である「船井幸雄論」が展開され、いつの間にか「道教」論となってゆくが、読む人によっては単純に宗教への拒否反応や、それまでの論述との非関連性から、違和感を感じる方も多いと思う。しかし副島氏の批判や論述は、優れた思想(宗教とは呼ばない方が良い)である道教こそがこれからの世界を正しい秩序に引き戻すために必要な思想であり、それに相反するアングロサクソン流の「グローバルスタンダード」と全面対決するという「意志」に根ざしている事が読み取れる。この点にも共感できる。
しかし、一般受けは期待できない・・・・・。
戦争へ向かっているとの警告、解決策を次作に期待しよう 2006年は昭和6年に該当する、ということで昭和史の解説が続く。
日本は米国の一部の金融財閥によってコントロールされて、
戦争へ向かったということ、後世の評価は勝者が塗り替えるので
勝者の味方として役割を担った人間の評価が現在では不当に
高くなっているということ、が理解できた。
その中身は興味深いものであった。
「次の超大国は中国だとロックフェラーが決めた」を読んでいる
方にとっては、中身が近いので少し重複感を感じるかもしれない。
すこし残念なのが昭和史と現状の関係性(どのように一緒なのか)
がもう一つ見えにくい面があったということと、
戦争に向かっている状況に対して、どのように対処していけば
いいのか、という解決策についてあまり触れられていなかった
ことである。
この部分に関しては次作に期待しよう。
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[ 大型本 ]
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古地図・現代図で歩く 昭和30年代東京散歩 (古地図ライブラリー (別冊))
【人文社】
発売日: 2004-08
参考価格: 2,520 円(税込み)
販売価格: 2,520 円(税込)
( 通常24時間以内に発送 )
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カスタマー平均評価: 0
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[ − ]
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田中清玄自伝
・田中 清玄
【文藝春秋】
発売日: 1993-09
参考価格: 1,937 円(税込み)
販売価格: 品切れ中
中古価格: 3,478円〜
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・田中 清玄
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カスタマー平均評価: 4.5
昭和のもう一つの歴史 飛びぬけて面白い人物の自伝。戦前、弘前高校、東大美学へ進んだインテリであることは、読めば行間から分かることとして、戦前は武装共産党の委員長。過激と言えばこんな過激な人はいない。国家を相手に戦争をしていたのだ。だが一転転向。戦後は天皇制護持、反米、反共、という当時としては独自でユニークなスタンスでフィクサーとして暗躍。山口組田岡とは兄弟分の繋がりで闇の世界にも確固たる地位がある一方、田中角栄、中村素平、中曽根康弘等々、政財界へのルートもしっかり握っている。だが世渡り上手とはほど遠い、一代の英傑で、スタンスの根本は徹底的な個人主義、自由主義者と見た。岸信介、児玉誉士夫らの満州帝国をイメージしたような復古主義的右翼とは鋭く対立、六〇年安保の影の仕掛け人として岸政権を打倒。しかし、児玉の差し金で東京會舘で狙撃を受け重傷となるが起死回生の復帰。暴力団抗争への発展を食い止める。石油メジャーに誘導される英米追随路線は否定し、インドネシアらの産油国と上手に付き合い、一方、欧州連合(今日のEU)成立へ協力し、世界のバランスオブパワーを念頭に置いた反米、反ソ路線を進めたことは特筆されると思う。中国などアジア諸国への配慮も先見の明で、決してなめた態度を取らず慎重に未来へと向けた付き合いをリードしていくところは今日のお手本。それと、南ア問題の原因は、あそこが原発に必要なウラニウムの産地にあることを語っている件は、読んでいて、はっとした。とにかく現代の活劇を見るような面白さに溢れた自伝だ。
縦横無尽に生きた本物の国士 10年経ってもその言葉は色あせない。アジアの問題や靖国問題などにも回答がある。一応インタビュー形式を取っているが、元毎日新聞編集委員の大須賀瑞夫氏による抜群の構成である。章ごとに登場人物の紹介があり、非常に分かりやすい。語っている内容は、「挑戦者たち」(落合信彦)、「入江相政日記」(入江相政)、「田岡一雄自伝」(田岡一雄)、「お父さんの石鹸箱(田岡由伎)などで裏づけされる。田中清玄氏の一見厳しい言葉にもやさしさを感じるのはなぜか。あらゆる世代にぜひ読んでもらいたい再出版を期待される一冊。
世の中をここまで自分なりの義を貫け、世界中で活躍した人間はそうはいない。 田中の自伝は読んだ直後は田岡一雄の友達位にしか考えていなかったが、よくよくこの本を読んでみると、この人は集団主義の日本の中で、戦前なら本当に日本中を敵に回す共産党で武装化までする活動をして戦後も既存の右翼とは違い、自分で築いた道を大きく開花させていく。
会津武士としての実家からの教えから、戦後は玄峰という僧侶の教えに基づき、岸や児玉とは一線を隔する右翼でも左翼でもない独自の視点から彼なりの世のため人のためによかれという筋の通った生き方をしていく。
そんな彼を欧州のハプスブルク家の主のオットー大公やノーベル賞受賞したハイエク教授などと深い交流をする。
彼は非常に多くの各界の超一流といえるような人間と交流がある。
頭山満と終戦前に会ったこともあるらしく、また中曽根元首相や大宅壮一や経団連会長の土光敏夫など、どちらかというと実力者だが国家のことを本当に考えた人間達と交流がある。
アラブ、東南アジア、中国など幅広い世界をまたに駆けた活躍を続け、終生第一線で活躍している。
多くの黒幕とわれる人間が途中で、スキャンダルなどにもまれ、落ちぶれていくなかで彼の世の中の遊泳術は義を貫くゆえ一見損をしたところがあっても、長い目でみれば信用を勝ちえ、大きな花を咲かせていくようで、何か王道の生き方について考えさせられる部分がある。
山口組組長の田岡が「あの人はすごい、異質の人だ。」と言って田中清玄を尊敬して田中のアドバイスで岸や児玉の反共の活動にのらず、むしろ左翼の全学連を応援した。
その後、全国のやくざは国家により総壊滅させられそうになるが、山口組が権力に対抗的な姿勢を示した部分も国家のやくざつぶしに動いた原因のひとつかもしれない。もちろんやくざが経済活動から力を持ちすぎたことや警察力が増し、左翼勢力をつぶすのに国家が暴力団を必要としなくなったこともあると思うが。
義を貫く生き方がいいのかは、ケースバイケースだと思うが、田中のような人間を見ていると何か勇気をもらえるというかプラスの刺激があり、惹かれるものがある。
純正日本人、田中清玄 まるで小説でも読むような、スケールの大きい国際的活躍の面白さもさることながら、私は田中清玄という人物の、奥深い精神性に何よりも興味を惹かれた。「従軍慰安婦」や「〈南京?〉虐殺」などに対するコメントをみれば一目瞭然、清玄氏の立場は紛れも無く「反戦・反軍国主義者」のそれであり、氏が自称する「反米」「反共」とは「反覇権主義・帝国主義」のことだとわかる。その点、氏は立派な左翼だろう。 ただし、右か左かは人間としての清玄氏を云々する際には全く重要でない。 田中清玄氏は、「純正の日本人」なのだ。即ち「日本民族のまさに中核には、天皇制があ」り、「この世のあらゆる物は神であり、そのようにして自然界は存在しているという、汎神論の世界に自分は生きている」という自覚を持った人、ということである。 その日本人としての清玄氏が、一神教のキリスト教とギリシャ文明とを母胎にした西洋合理主義の申し子である共産主義、マルクス主義を拒絶、転向に到った過程は、国際共産主義者によってオルグされ(かけ)た経験のある私には良く分かる。 こうした日本人の「民族の記憶」とも言うべきアイデンティティは、心の奥深くにあまりにもさりげなく浸透しており、私の場合、心理的暴力によって「国家への同一性」を破壊しようとする共産主義の傍若無人な侵入によって、初めてその存在を意識させられた、ともいえる。 幸いなるかな、その「赤い嵐」に晒された時、日本人の大多数である労働者農民大衆自身が、「天皇制廃止」のスローガンを無批判に受け入れることを拒否した。即ち「搾取者天皇を引き摺り下ろして現世での物質的欲望を満たせ」という共産主義者の非精神主義的煽動に乗るようなオッチョコチョイはいなかった、ということだ。 地球環境問題や国際間紛争解決の糸口を探る際、他文化を許容し、調和と共棲を理想とする日本の死生観が役に立てるかもしれない、と今ほど強く感じられる時はない。
彼こそ昭和史で一番面白い人生を送った、男前な男 日本経済新聞も彼こそ『私の履歴書』に登場させるべきだったと思う。 この人はまさに頭山満の再来。左翼も惚れる本物の右翼。 国際派としても盛田昭夫に匹敵する。 昨今、大法螺吹いている自伝の著書が多い中で、彼の言っていることは 大体本当のことで、戦前は武装共産党の書記長(今の日本共産党の委員長 にあたる)であり、そのことについては立花隆の著書をはじめ色々な書物に 書かれている。また山口組三代目組長・田岡一雄とのマブダチぶりは、 田岡自身の著書『山口組三代目 田岡一雄自伝』(徳間文庫)でもわざわざ 一つの章を設けて述べられているし、戦後、昭和天皇と会ったところについ ても『入江相政日記』(朝日新聞社)にも載っていて、ちゃんとした裏付け がある。 しかし私が驚いたところは、カタールの石油買い付けで、あの石油王 ジャン・ポール・ゲティとの落札競争に競り勝ったり、 イタリアのENI(国営炭化水素公社)総裁のエンリコ・マッティから 石油採掘に関する資料を手に入れたり、世界的なアラブの政商 アドナン・カショギに対して彼の前で怒鳴ったり、他の日本人との スケールの違いには恐れ入る。 そういう意味で国際レベルで本物の喧嘩が出来る凄い男だ。
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[ 文庫 ]
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封印されていた文書(ドシエ)―昭和・平成裏面史の光芒〈Part1〉 (新潮文庫)
・麻生 幾
【新潮社】
発売日: 2002-02
参考価格: 700 円(税込み)
販売価格: 700 円(税込)
中古価格: 1円〜
( 通常24時間以内に発送 )
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・麻生 幾
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カスタマー平均評価: 5
事件の真相に迫りたい人必読 発掘されたファイルを通じ、麻生幾の透徹した視線が捉える事件の真相に慄然とすることは請け合いである。 本書は、誰もがよく知る11の事件を取り上げ、その背景を深く追ったもの。これをみると自分が当時、新聞報道を通じて知ったと信じていた事実がいかに浅薄なものであるかを思い知らされる。書物の意義とは、時代を離れて歴史的に検証を行うことができる点にあるということなのだろう。特に三菱銀行強盗事件、金丸逮捕劇、ミグ25亡命事件に関する記述は秀逸。 クオリティの高い作品を連発し続ける麻生幾の今後に期待して、星5つ。
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[ 文庫 ]
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昭和史の謎を追う〈下〉 (文春文庫)
・秦 郁彦
【文藝春秋】
発売日: 1999-12
参考価格: 770 円(税込み)
販売価格: 770 円(税込)
中古価格: 82円〜
( 通常24時間以内に発送 )
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・秦 郁彦
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カスタマー平均評価: 4.5
きめ細かな分析 著者は難しい表現を極力省き、誰にでも分かるように注意しているのだが、それでも何も知識がない人が読んだら、ちょっと難しいのではないかと思った。しかし、法学博士でもある著者だからであろう、私情を挟まずに理路整然と解説している姿勢には拍手を贈りたい。 通史ではないので、歴史の流れを捉えるには足りないが、昭和史の知識を少しでもお持ちの読者なら、断片をつなぎ合わせる楽しみはあるだろうし、なるほどとうなずく場面も多々あるはずだ。 ほとんど新説はないが、昭和史を再考する上では大変貴重な論集だと思う。 残念だったのは、何も知識がない人のために各章のはじめに事件の解説やどんな事件だったのかを少しでもあげてくれると助かると思った。しかし、膨大な数の参考文献が巻末に表記されているので、本書を読んで昭和史に興味を持ったのならば、これらの読破にチャレンジしてみても良いかも知れない。
歴史の影にも光を当てる。 各章を読むことにより、歴史の細部を知り、歴史教科書や、マスコミで取り上げられる主要な歴史認識と事実認定の危うさを知ることができる。陰謀によらずとも、人は、無知と錯覚、盲信により、容易に騙され、事実誤認し、また、自己愛とでも言うようなもので自己の正当性に固執しやすい事実を、本書を読むことで認識できる。
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