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[ 単行本 ]
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「坂の上の雲」を101倍堪能する 日露戦争明治人物烈伝
・明治「時代と人物」研究会
【徳間書店】
発売日: 2005-08-31
参考価格: 1,785 円(税込み)
販売価格: 1,785 円(税込)
( 通常24時間以内に発送 )
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・明治「時代と人物」研究会
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カスタマー平均評価: 4.5
よくまとまった本 日露戦争における主要な人物を全て網羅した本。日露戦争の流れに重ね合わせながら各人のエピソードをまとめているあたりは良いできだと思う。ただし作者個人による各人物の評価は納得いかないものもあり余計だと思う。
明治の軍人像 坂の上の雲を読んで日露戦争のことをもっと知りたいと思ってこの本を読んだのですが、色々なエピソードが含まれていて面白かったです。
写真もあるので、「へー、秋山好古ってこんな顔だったんだー」という感じで別の楽しみ方も出来ました(笑)
だけど格付けに納得できないところもあったので星4つです。
非常に人が育っていた こうして見ると日露戦争を戦った人物、というのは良きにつけ悪しきにつけスケールの大きな人達だったことが分かります。非常に人が育っていた、その理由はいくつかあると思いますが、軍人としては戊辰戦争、西南戦争などの戦争経験があったこと(西郷従道、大山厳などは言うまでもなく、山本権兵衛はなんと十二歳から参戦、児玉源太郎や黒木大将など将官クラスは例外なく内戦経験者です)、維新の創成期に否応なく国づくりの責務を負い、国家の枠でものを考えていたこと、また、当時の欧米列強の植民地になるかも知れないという危機感も昭和期には比べようなく大きかったのでしょう。
戦争をいくつか経験し、修羅場をくぐり抜け、身を持って自分の生きる意味を強く、真剣に考え、ひとつ舵取りを間違えると、日本全体をおかしな方向に導いてしまうかもしれない、そうした危機感の中でこの世代は育ったことを感じることができます。
ひるがえって明治三十年代に登場する陸軍大学校出身の佐官クラスには、すでに面白みのない試験に長けたエリートが出現してくることも本書で示唆されています。軍隊という、平和を守るための組織が、平和に近づくほど人が育てられなかった悲劇のようなものを、その後の昭和期に向けた日本の歩みを考えると感じざるを得ません。
意外なエピソードにア然 日露戦争の四方山話のテンコ盛りでした。
そのなかで、サラッと記された「旅順」よりも「奉天」よりも
「脚気」が最大の被害だったという事実。
その加害者が森林太郎こと文豪・森鴎外というのにはびっくりでした。
「脚気」そのものの認識がなかったので余計ですが。
ラストの「死にたくなる極限状態の気持ち」と
「児玉の相反する守るべきもの」も考えさせらました。
雨の坂の乃木をいつまでも見つめ続けたひとりです。(泣)
島村速雄に喝采 私はこの本の中では島村速雄が最高によかったです。「優先順位の在り方」という提言が「戦争」「戦場」「参謀長としての立場」という究極の場でなされたところにも意義があったと感じました。というかスケールが全然違う。圧巻でした。 高橋是清や小村寿太郎などもよかったです。福島安正と乃木が可哀相で組織の在り方というものを考えてしまいましたが、それよりなにより!文豪「森鴎外」には心底腹が立ちました。児玉と島村が持ち得た明治の気骨には素直に感動です。
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[ 単行本 ]
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英傑の日本史 信長・秀吉・家康編
・井沢 元彦
【角川学芸出版】
発売日: 2006-09
参考価格: 1,575 円(税込み)
販売価格: 1,575 円(税込)
中古価格: 490円〜
( 通常24時間以内に発送 )
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・井沢 元彦
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カスタマー平均評価: 5
井沢節、久々に炸裂! 英傑の日本史、ついに満を持して戦国三雄の巻です。
やっぱり、井沢さんは戦国時代を語っている時が一番生き生きとしていますね。文章のテンポも流れるようです。
織田信長、豊臣秀吉、徳川家康。この三人について、主に内心への重大な変化をもたらした大事件について活写されています。
とまあ、言葉で絶賛するだけではなんなので、私が度肝を抜かれたフレーズを少し抜き出してみます。
(以下、引用)
「生身の人間が自ら宣言して神になれる」と言った信長を、嘲笑する学者や評論家がいる。
そういう方々にぜひ申し上げたいのは、この一言だ。
「あなたたちは、日光東照宮を知らないのか?」である。
日光東照宮の御祭神は、東照大権現すなわち徳川家康である。
(中略)
信長を笑う人間は、家康がそれを実現したことに気が付いていないということだ。それは信長から家康に至る時の流れ、すなわち「歴史」がわかっていないということに他ならない。
(引用終わり)
実に示唆に富んだ指摘ではないでしょうか。目からウロコが落ちる、とはこのことだと思いました。
なぜ信長や家康が神にならねばならなかったか、明快な理由があるのですが、それは読んでのお楽しみということで。
それにしても、久々の井沢節。痛烈なまでの皮肉を軽快に飛ばす妙味の文体にはただ恐れ入るばかりです。
まあ、あえて難を言わせてもらうなら、これまで自ら「逆説」と称していた「井沢流解釈」が、今回はちょっと断定的になっているかもしれないな、とは思いました。
しかし、歴史というのはこれほど楽しいものなのかと誰もを驚かす名作であることは確かです。
これまで歴史の楽しさと無縁だった人にこそ、読んで欲しい一作です。
最後に、一言。戦国という魅力的な時代、天下人以外にも英傑はいます。
井沢さん、「武田信玄編」は信濃戦雲録があるからいいですが、「上杉謙信」「伊達政宗」「柳生石舟斎」「毛利元就」などについての英傑の日本史も書いてくれませんか?
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[ 大型本 ]
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一目でわかる江戸時代―地図・グラフ・図解でみる
・竹内 誠
【小学館】
発売日: 2004-04
参考価格: 2,520 円(税込み)
販売価格: 2,520 円(税込)
中古価格: 1,960円〜
( 通常24時間以内に発送 )
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・竹内 誠
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カスタマー平均評価: 5
江戸時代というファンタジー。(^^ 表紙を見てわかる通り、パステル系の配色であしらわれた地図や円グラフで江戸時代の各種統計資料をまとめています。 一見なんでもないようですが、類書や古文書から丁寧にデータを拾い上げた労作であるという印象を受けました。 学生時分世界史に対して感じた退屈さは、例えばローマ帝国史は歴代皇帝を大雑把に追い、あたかも歴史の必然であるかのごとく帝国の興隆をなぞっているだけだからでしょう。 またヨーロッパと違い、現代日本の町並みは全国どこであろうが(ただし京都はやや例外)歴史の重みを感じさせません。 しかし江戸時代のメンタリティは日本人の心情に今なお潜在的に反映されているという思いは次第に強くなっています。これを説明すると長くなるので割愛しますが・・・。 江戸時代は日本人にとってのファンタジーであるという主張が頷ける方にはこの本はお勧めです。金1両の現在価値、都市と農村における死亡年齢分布、佐渡金山の金産出量の推移、各藩の財政状況など、思わず目を見張ってしまうような発見に満ちあふれていると思います。
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[ 単行本 ]
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名探偵コナン推理ファイル 日本史の謎〈1〉 (小学館学習まんがシリーズ)
・阿部 ゆたか ・平良 隆久 ・丸 伝次郎 ・東野 治之 ・青山 剛昌
【小学館】
発売日: 2003-12
参考価格: 840 円(税込み)
販売価格: 840 円(税込)
中古価格: 344円〜
( 通常24時間以内に発送 )
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・阿部 ゆたか ・平良 隆久 ・丸 伝次郎 ・東野 治之 ・青山 剛昌
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カスタマー平均評価: 4.5
名探偵コナン推理ファイル 日本史の謎〈1〉 漫画の内容は、探偵推理マンガで、ストーリは2つあり、ひとつは古墳時代、もうひとつは奈良時代です。子供は食い入るように読んでいます。仕方ないのかもしれませんが、古墳時代と奈良時代とが完全に別個になってしまい、その二つの歴史的つながりはまったくありません。最後に年表が付録的についているのですが、そこまで子供は読まないので、全体的な歴史の流れは理解できないでしょう。
歴史が苦手な現代っ子にお勧め ご存知名探偵コナンが活躍する漫画なのですが、ストーリーの中に巧みに日本史の出来事が折り込んであり、読んでいるうちに歴史の流れがわかってしまうという本です。随所に解説もあり、本を読むのは苦手だけど漫画ならというお子さんなら楽しく日本史を学べるのではないでしょうか。
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[ 文庫 ]
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大東京の地下99の謎―帝都の地底に隠された驚愕の事実 (二見文庫)
・秋庭 俊
【二見書房】
発売日: 2006-11
参考価格: 630 円(税込み)
販売価格: 630 円(税込)
中古価格: 159円〜
( 通常24時間以内に発送 )
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・秋庭 俊
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カスタマー平均評価: 3
相変わらずお粗末な内容 地下鉄や駅の構造を中心に,著者が不可解だと考える点をリストアップする構成なのだけれど,謎を投げかけるばかりで結論がほとんど無い(この本に限らず関連シリーズ全てがそうだ).そもそも「謎」として提起した項目が著者の妄想と拙い想像力,脆弱な証拠に立脚しているので,問題設定自体が適切なのかどうかがまず怪しい.百歩譲って,その問題が“謎”として成立するとしても,その後のアプローチもまた致命的だ.大した調査もせず証拠も挙げずに「…だろう」「…なのではないか?」と想像上の勝手な解釈を付け,結論に至らぬまま終わる項目がほとんど.非常に脆い“証拠”を基礎に議論を展開し,その上にいくつもの仮説を積み上げるので,最初の証拠がグラつくと後はもう目を覆わんばかりの勢いで議論全体が崩壊して行く.このサマはある意味で見事だ.逆にこの過程が見モノかもしれない.そうか,それを楽しむ本なのかもしれない.
あえて厳しい評価にしました この本は著者も述べているとおり、これまで著者が出してきた本の集大成である。私も読んできたが、目新しい事実はない。むしろ、取材上の壁がいろいろあって、謎の解明が進んでいないことをうかがわせる。関係者からの情報提供もあるのだろうが、新たな事実を示すのはなかなか難しいのだろう。今後の著者の健闘を期待したい。ただ、東京の歴史や鉄道に興味ある人にとっては、コンパクトにまとまった本だと思う。
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[ 文庫 ]
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吉原と島原 (講談社学術文庫)
・小野 武雄
【講談社】
発売日: 2002-08
参考価格: 945 円(税込み)
販売価格: 945 円(税込)
中古価格: 740円〜
( 通常24時間以内に発送 )
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・小野 武雄
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カスタマー平均評価: 3.5
職業として とかく廓というところに対し、良いイメージをもっていない。どちらかというと女性が抑圧されたようなイメージをもっていたのだが、著書は当時の東西比較し、また華やかさ、状況に置かれた女性のたくましさ・大変さを、淡々とつづられている歴史書的な書と感じた。感傷に浸ることなく淡々と読むことができた。
興味深い内容 「吉原」は割合よく知られていますが、「島原」について詳しく書かれていたのがよかったです。決して「苦界」のみの評価をせず、彼女たちのさまざまな人生にも追及が及び、女性としても大変興味深く読みました。
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[ 新書 ]
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戦争で死ぬ、ということ (岩波新書)
・島本 慈子
【岩波書店】
発売日: 2006-07
参考価格: 777 円(税込み)
販売価格: 777 円(税込)
中古価格: 590円〜
( 通常24時間以内に発送 )
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・島本 慈子
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カスタマー平均評価: 5
強靭なる反戦の所以 日本社会の右傾化や脱「戦争アレルギー」などが言われるようになって久しい。
しかし一方で、そのような時流にはあくまで反対し、徹底的に抵抗する覚悟の定まった反戦の流れもまた、日本社会の中には確実に存在している。この確固たる反戦の拠って立つ基盤は何なのだろうか。
それが実は、本書のタイトルともなっている「戦争で死ぬ」ということのリアリティである。日本の反戦が強靭な芯を持っているとすれば、それは空襲や原爆などによる受動としての戦争死だけでなく、勝ちに行った戦場で他者を殺し、敗走の途上で殺され斃れゆく戦争死、銃後の砲兵工廠やウラン鉱・毒ガス工場での労働が生産する戦争死などがリアルに経験され、しかもその戦争死を正当化するロジックが現在に至るまで破綻したままである、という点に求められる。
(ドイツが「ヨーロッパ」というファンタスティックな共同体によって戦後の軍事行動を正当化し得たいっぽう、日本が「アジア」で同じ行動を正当化できたか否か、考えてみよ。)
本書が報告しているのは、正当化という名のファンタジーに包まれることのない剥き出しの膨大な戦争死である。登場する人々に共通するのは、死者の死を他人事ならずして経験し、自らの内に引き受けているということであろう。リアルな戦争死を3人称化せずにいる人々の反戦は、時流とは無関係に屹立する。1人称複数で語られるこうした非業の戦争死が、もしすべて他人事として語られるようになれば、おそらくその時、歴史は振り出しに戻るのであろう。
「死者を忘れない」もしくは「死者とともに生きる」とはどういうことか。それが、本書を読了した読み手に突きつけられる課題となる。
戦争賛美者は、戦争の血なまぐさい実態を知った上で勇ましい声をあげよ! 現在に日本人の大半は戦場を見たことがなく、原爆や大空襲・アジア諸国の戦地等大量に人が死んだ現場を知る人は更に少ない。 その筆舌に尽くし難い惨状を目の当たりにした人で、今自衛隊という名の日本軍を外国に派遣せよと言う人を私は知らない。
本書終盤の9・11によりWTCで働いていて死んだ人の父は、アフガン空爆に対し「せがれは事件に巻き込まれたが、さらに、関係のない人たちが命を失うのには耐えられない。日本は米国の腰ぎんちゃくになる必要はない。テロの背景にある貧困の解消などほかの手だてを考えるべきだ。」と新聞にコメントし、墜落したUA93便に搭乗していた唯一の日本人大学生の親友は、「たぶん、僕らが憎むのは簡単なんですよ。『イスラム教嫌いや』と短絡してしまうことはすごく簡単。だからこそ、いまここで、憎むのをとにかく止めようと。そして、どうすればこういう悲しみをなくせるかを考えはじめようと」と筆者に語る。
N.Y.でも多くの遺族がアフガン・イラクへの攻撃に反対しているニュース映像を見た人もいよう。
短絡的に仇討ちの発想を人は持ちがちであるし、戦時になれば冷静に考えられず、大きな流れに押し流されてしまうからこそ、その一歩手前の今こそ、その流れを食い止めねばならないのだと思う。
戦時中、軍国少女であった芹沢氏はその理由を教育者が戦争を正当化し、報道が戦争に都合の悪い事実は伝えず、家庭の中にも戦争反対の雰囲気がなく、個人的には読書量が少なく物事を深く多面的に考える習慣がなかったこと等をあげる。
今という時代を、労働者が切り捨てられていく現状をルポした著作が何冊かある筆者らしく、現在の労働条件の悪化を戦前と結び付けるが、まさしく今は戦前であると多くの人が想像し、バーチャルでない血なまぐさい実際の戦争をイメージできなければ、またこのまま惨劇は繰り返されるであろう。
正しい選択への足がかり 日本には「敵対してる」と言えるような国があり、また多くの国々を敵に回してしまっている大国との固い同盟関係がある。
そういう事実がある限り、自分たちが戦争と無関係だと考えるべきではない。
多くの人たちは戦争を望まない。
だったらどうしたらそれを回避できるのか、もっともっと真剣に考える必要がある。
この著者は戦後生まれ、つまり我々と同様に戦争を知らない。
そして彼女は「戦後生まれの自分の感性だけを羅針盤として」この本を書き上げている。
だから著者と読む我々との間には戦争を知っている世代と知らない世代との隔たりがない。
彼女は、戦後生まれのものが未来のことを考えるときの手がかりとして、この本を書いている。
「未来のことを考えるときの手がかり」とはどういうことか?
簡単に言ってしまえば、戦争を拒むか否かということを判断するための手がかりということである。僕たちは戦争を望まない。しかしその一方で、現在の国の流れを考えれば、少しずつ戦争に近づいていることは否定できないのだ。
難しい話だと言って避けてる場合ではないと思う。結局、一番こわいところはそこなのだ。
自分の頭で考えようとせず、マスコミに頼ろうとすれば、あっという間に僕らの方向性は変わる。
少しでも正しい知識を得る手がかりとして、多くの人に読んで欲しい。
戦争で死ぬことの実相 本書では、空襲や爆撃にあうということが実際どういうことなのか、あるいは「敵」というだけで残虐に殺し合う事実、報道や産業に関わって、間接に人殺しに参加していく状況などが淡々と描かれています。
戦争の日々を生きた人にとって、誰にも殺されたくない、誰も殺したくないというのが、率直な願いだったのではないでしょうか。そして今も戦争やテロの中に暮らす人々にとっても。
日本を戦争する国にするのかどうか考える際に、一つの重要な材料を提供してくれている本だと思います。
戦争を知らない世代の戦争観 今、見失ってはいけないことは、戦争の本質である「大量殺人」の実態と、それが必然的に生み出す怒り・反発・憎悪・復讐心・悲しみといった普遍的な「人間の感情」である。戦後生まれの目で自分なりに戦争のエキスを語り直したかったという。戦争のリアリズムである。戦争による死がどういうものか、そこから目を逸らしては戦争も平和も語れない、と感じる戦争を知らない世代の著者に敬意を払わずにはいられない。第6章「おんなと愛国」に「あるときは〈戦争で殺すために産む〉ことを求められ、またあるときは〈チアガール〉として、戦う男のために涙を流すことを求められた女性たち」を語る(雅)
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[ 単行本 ]
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敗北を抱きしめて 下 増補版―第二次大戦後の日本人
・ジョン ダワー
【岩波書店】
発売日: 2004-02
参考価格: 2,730 円(税込み)
販売価格: 2,730 円(税込)
中古価格: 1,900円〜
( 通常24時間以内に発送 )
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・ジョン ダワー
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カスタマー平均評価: 4
日本の「戦後」の原点 米国における日本史研究の大家、ジョン・ダワーが著した本書『敗北を抱きしめて』は、敗戦からサンフランシスコ講和に至る占領下の日本の7年間を生き生きと描き出すものである。占領軍による改革は勝者による「押し付け」であったとし、その産物である戦後民主主義に対して否定的なスタンスを取る言説は今なお根強い。しかしながら著者は、「押し付け」の構造があったこと自体は肯定しつつも、しかし敗者の側を一方的に受動的な存在であったとみることを拒絶する。単に「勝者が敗者に何をしたか」ではなく、日本占領を「抱擁」として捉え、敗者が勝者にどのような影響を与えたのかに着目するのである。
下巻では天皇の「人間宣言」、新憲法制定、東京裁判が描かれ、敗者たる日本の保守指導層が「上からの革命」を変質させ、戦後の「天皇制民主主義」を築き上げていく過程が描かれる。さらに、日本の経済成長を支えることになり、かつ米国が批判してやまない日本の官僚主義的資本主義についても、実はそれが占領期における「日米合作」の遺産だということが論じられている。
「戦後レジーム」からの脱却が叫ばれる今、そもそも日本の「戦後」とは何だったのかを考え直す上で本書は避けては通れない一冊であろう。
「日本はどうすれば、他国に残虐な破壊をもたらす能力を独力で持つことなく、世界の国々や世界の人々からまじめに言い分を聞いてもらえる国になれるのか?」(下P427)
岐路に立つ今、ダワーのこの問いかけは重い。
ブッシュの中東民主化幻想を米国人に信じさせた本 ダワーによると45年憲法はマッカーサーが中国やオーストラリアから天皇を守る為、あのような規定にしたという。また天皇制護持もハーン好きのフェラーズという一軍人の思想の影響が大きかったと。どうも信じられない。天皇制をどうするかといった重大事項は大統領をはじめ本国のもっと上のレベルで決定されていたはずだ。完全に武力制圧したマッカーサー司令部が日本人の「ゲリラ戦」や共産主義の浸透を本気で恐れたとも思えない。やはり天皇人質作戦が奏功して米国の国益追求に徹した占領が成功したのだ。ただ結果的に日本国憲法は確かに松本案などより良いところのあるものになったとは思う。また神格否定も良かった。でも米国がどこかの国に占領され基督の「人間宣言」を強制されても従うとは思えない。全く同じ位良いことなのだが.........。(やはり寺崎は曲者。)
やりたい放題 上巻とは違い下巻は、占領政策の核となる部分の話である。一つは、戦争犯罪人および東京裁判の話である。もう一つは、アメリカ軍による思想統制の話である。要は検閲である。
日本に自由と民主主義を植え付けるという名目で、思想統制を行い、知恵のあるものを裁判に送り、やりたい放題である。思想統制すなわち検閲は、GHQの構成員個人のスキャンダルを含め名誉を維持するためのものから、反共産主義の防波堤のための国家づくり至るまでありとあらゆる場合で行われている。しかも、確固とした基準があるわけでもなく、むしろ行き当たりばったりで、勝者による敗者いじめ以外の何物でもないようにしか思えない。特に東京裁判はひどいものである。ここ数年間は夏恒例のテレビで東京裁判を取り上げることはなくなったもの、何度も見た経験からその酷さはよくわかっている。そもそも、裁く立場にある判事は、英米法の知識どころか、実際の国際裁判に関する知識も何もない人間たちで構成されている。まさにアメリカおよびイギリスの操り人形にしかすぎない。ハル判事の反発も見事なまでの無視である。大東亜戦争を正当化する気はないか、彼はあくまでも勝者が敗者をたたくためのものでしかありえない。
このような情報統制、思想統制は、アフガニスタンやイラクでも行われていることであろう。日本の占領下は、総力戦を10数年にわたり戦いぬいてきたために、精神的にも肉体的にも規制してきたために比較的簡単に統制がうまくいったのであろう。もちろん、日本人の自由意思感覚のなさや勝ち馬に乗るという独特の思考問題も抱えているだろうが。アメリカ人やイギリス人のこのような感覚での海外での展開は、決して平和をもたらすものではなく憎しみを増加させるだけのものであろう。
この本は、上巻とのカスとり文化のような大衆文化の話よりも、政治的思想統制の話であり、下巻の方がかなりの価値を持つと思われる。
植民地弁解本なんじゃない? 最初に読んだ時は圧倒的な資料と綺麗な言葉で感動させられたがよくよく考えてみるとアメリカは開放軍と迎えられてアメリカの作った新憲法は結局良かった。日本のアメリカ化は正しかったといいたい本なんじゃないかと思った。そう思った一番の理由は米英を攻撃した理由を後先考えず場当たり的に攻撃したと説明されてたからです。たしか本当は西側諸国の経済封鎖に追い詰められて切羽詰ってやけくそになって戦争したのが真実だったはずです。裁判の発起人であるアメリカが仕掛け人だからこの裁判偽善だと言ったのがパル判事の主な主張だったはずです。最近の日本の没落はアメリカの新教育で日本人がバカになったからだと思う。それをWW2で後先考えず場あたり的に攻撃したと説明して今回の没落もそれと同じことだと説明するダワーの誠実さに疑問に感じます。
非常にやっかいな植民地弁解本だと思う
口承歴史 本書を読んだときに、私が違和感を感じ立ち止まってしまうのは、口承歴史(oral history)と公的歴史の差なのかもしれない。歴史の時間で教えられる歴史以外に、自分を取り囲む人たちから口で伝えられた歴史があるからかもしれない。それは、軍部の堕落であり、戦中のプロパガンダであり、闇市であり、共産主義の台頭であり、天皇制がいかに日本の歴史において機能してきたかということである。それでも、私に口承歴史を伝えてくれた人々は、悲惨な歴史の中でも生き延びるためにその人たちが発揮した知恵と、自分の国と国の歴史に誇りを持つことの大切さであった。本書は、この口承歴史と公的な歴史のハザマを行っているような気がしてならない。
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[ 単行本 ]
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敗戦真相記―予告されていた平成日本の没落
・永野 護
【バジリコ】
発売日: 2002-07-15
参考価格: 1,050 円(税込み)
販売価格: 品切れ中
中古価格: 221円〜
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・永野 護
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カスタマー平均評価: 4
戦中の雰囲気を知るのに貴重な一冊 言うまでもないが、戦争中は言論統制があったために、真実を書くことはできない。また、戦後はGHQの言論統制があり、連合軍に批判的な出版はできなかった。この本の元になった演説は昭和20年9月という、その端境期に行われたので、運よくそれらの制約がない。
学術論文ではないし、本人の思いの赴くところ、言いたい放題にしゃべっているため、少々不正確な部分はあるし(レーダーでも夜間写真は撮れない)、大時代的な言葉遣いが気になるが、興味深い情報も含まれている。
簡単に言えば、戦中の日本は、政府の掛け声とは裏腹に、実態は総動員体制なんてものではなかったということだ。限られた資源を効率的に運用するリーダーシップがなかったのである。
戦争の原因についても、明確な指摘がある。
本質を見抜いた全体観ある高い見識 本書は太平洋戦争における日本の敗因を、社会システム、軍部の実態、国家理念などの観点から余すところなく分析・整理している。それは、冷徹に成熟した思惟の所産であり、後代への熱き思いの伝達でもある。その的確さに舌を巻いたのみならず、本書の基となった講演(本書はそもそも講演録である)が敗戦後数ヶ月の時点で行われている事実を知ったときに、私は驚愕するとともに、その頃より本質をとらえた全体観ある高い見識が存在していたことについて後輩として一国民として誇りを感じた次第である。
国も企業も、失敗の原因は同じ サブタイトルに 「予告されていた平成日本の没落」 とあるが、まったくそんなことは書いてない。 むしろ、敗戦直後の9月において、その後の日本の高度成長を予言した本である。敗戦の原因分析よりもむしろ、その洞察力のほうがすごいと思う。 失敗に学ぶ、という観点では、シドニー・フィンケルシュタインの「名経営者が、なぜ失敗するのか」とあわせて読むと面白い。 彼は、企業の大失敗の事例を多数研究し、失敗の類型を明らかにしたが、これにピッタリ当てはまる事柄が、本書の中にも多数見つかる。 過去の成功(=本書の場合、日露戦争)を過大評価し、正確な自己認識ができなくなって、誤った方向に突き進み、やがて破綻する、ということが、国のレベルでも容易に起き得るのだということがわかる。これは恐ろしい。 また、歴史認識という観点では、司馬遼太郎氏が「この国のかたち」の中で、 シナ事変からの10年間はそれまでの日本のどの歴史からも異質 と述べているが、本書における「軍部の異質さ」に対する感覚は、これと符合するものがあって興味深い。 戦争に関する話題だけに「軽い読み物」とはいいにくいが、内容は平易でわかりやすく、字も大きくページも少なく、具体的なエピソードも豊富なので、あまり深く考えないで、単なる読み物として、大変おもしろい本だと思う。
歴史を学び考えることの重要性 敗戦直後の筆者の公演がもとになっているらしいが、そのタイミングで国民の意識、軍のシステム、人材論、国際情勢、日本の将来・生き残り策についてここまで的確に分析と考察を行っていた人物がいることにまず驚く。その後の時間と批判を経た現代人の目でみれば当然のことでも、その時代に生きている人がそのタイミングで同じレベルの意見を言えるということは稀有のことだろう。副題にあるように、敗戦の要因と平成日本の抱える不振の要因は本質的に同様であり、現在の我々の心の持ちようにも参考になる意見や考え方も多い。目先の損得にふりまわされずに、過去を学ぶことから未来についてのアクションを知るということが歴史を学ぶということだろうし、数学や英語を学ぶことと同様に実社会で歴史で学んだことを活かしていくという姿勢が現代人全般に必要だと思う。そうすれば、すべてではないにしても、過去の重要な過ちのいくつかは回避できるはずである。
「失敗の本質」と比較して、 某優良大企業の役員に配布された本として、興味を持ち、読みました。「失敗の本質」という旧日本軍の失敗を組織論的に描いた本と比較すると、稚拙さがあるが、終戦直後に、政府の中央で働いた人が、このように旧日本軍の失敗を的確に指摘している点は興味が持て、また、終戦直後の「どん底」に打ちのめされた日本の雰囲気を行間から感じとれました(その後の日本の経済復興など約束されたものではありませんでしたから、、、)。
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[ 文庫 ]
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目からウロコの戦国時代―史料から読み解く武将たちの真相 (PHP文庫)
・谷口 克広
【PHP研究所】
発売日: 2003-09
参考価格: 650 円(税込み)
販売価格: 650 円(税込)
中古価格: 188円〜
( 通常24時間以内に発送 )
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・谷口 克広
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カスタマー平均評価: 4.5
資料に忠実な良書 歴史雑学書としては、初心者よりも、やや知識のある人のほうが楽しめるだろう。
今まで通説とされてきたことが、実は後世に間違って伝えられたという事例が数多く紹介されている。
「信長は、桶狭間の戦いで本当に奇襲を敢行したのか?」
「清須会議の出席者はたったの四人だった」
「秀吉自身は四国・九州攻めを戦ってはいない」
など、他書では得られない事柄が史実に基づいて書かれていて、まさに『目からウロコ』が落ちる思いである。
著者は良質な資料を参照するようこだわっているそうで、内容も信頼できる。
昨今流行りの「トンデモ歴史解釈本」とは一線を画す良書である。
歴史上の真偽、多くの学説が面白い。 戦国時代は面白いし、情報や書物やTVでかなりの知識も得ている。しかしその事件や人物は当然そうだと思っていても、実際は後世に作られた話でその内容が史実から離れて定着してしまったとか、どうも信用がならない。この書は信頼できる資料を基に、誤って伝えられていることに対し正しい説を紹介したり、知られていない興味深い史実を紹介することを目的としている。よって面白い戦国時代がより興味深いものにしてくれる価値ある書と感じた。例えば、竹中半兵衛の実像は?とか、戦場の武器としての刀は?とか、武田信玄は本当はやさ男だったとか、とても面白い。
より庶民的な視点で… 華やかで野心のみなぎる戦国時代ですが、戦闘での戦い方や戦争での狩り出される兵士の気持ちも分かると人間の醜さが伝わります。
戦国ファンでしたが、実はこんなもんだよって言えるような豆知識を得ることができました。それでも、事実はどうなのか断定できないところがあったり推測だったり、文献を分析するのって大変なんですね。
大河ドラマだけでは不満な方へ 歴史好きで大河ドラマも見ていたけども、
でも、いつもお決まりのシーンばかりで
少し飽きてきたなぁ・・・・
そういう方にお勧めの一冊です。
三河武士は本当は強くなかった!という下りなどは
歴史って都合よく書き換えられるものなんだ、と
強く印象づけられました。
文庫本ですからコストパフォーマンスも良し。
良書だと思います。
事実はどこ? 今まで語られてきた史実が、根本的に覆される1冊。
今までの「武将」のイメージより、もっと「人間」てきな部分を感じ取った。
「自分ブランディング」の参考になるかも。
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